グレン・グールド伝―天才の悲劇とエクスタシー
単行本
筑摩書房
\6,090
2000/09


★★★☆☆ (3.5)
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うなりながらピアノを弾き、いつでも冬のような厚着をしていたグレン・グールド。聴衆の前で演奏するのを嫌い、レコーディング・スタジオにこもっていくつもの問題作を世に送り出したこの興味深い人間についての本はすでにたくさん書かれているし、これからも書かれていくだろう。しかし、グールドを個人的に知っていて、音楽に詳しく、しかも精神科医であるということは、彼の伝記を書く上で非常に有利だ。
本書の著者オストウォルドはカリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部教授を務め、パフォーミング・アーティストの精神治療に携わった精神医学者。長年にわたってグールドと交友があり、アマチュアのバイオリニストとして彼と共演した経験ももっている。科学者らしい態度で書かれた本書は、資料を広く渉猟し、数多くのインタビュー(グールドを診察した医者を含む)で第一次情報を豊富に集め、情緒を排した筆致でグールドの人間性に迫る。
また、グールドの音楽性についても本格的な分析を行っている。しかし、本書中もっとも生き生きとした瞬間は、やはり2人の交友に関する部分だ。中でも、1957年の2月に著者が初めてグールドの演奏会を聴きに行き、楽屋を訪ねて意気投合し、そのままグールドを自分の車に乗せて友人の家に連れていったくだり。グールドと著者、そして著者の友人たちは朝が迫るまでセッションを楽しむのだ。なお、著者が新事実として告げているところによると、グールドの姓は10歳手前ぐらいまで「ゴールド」だったという。(松本泰樹)

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