豚の文化誌―ユダヤ人とキリスト教徒 (叢書ラウルス)
単行本(ソフトカバー)
柏書房
\3,990
2000/11


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 日本人にとって、豚はいくつかある食肉獣のひとつにすぎない。ところが、キリスト教文化圏ではまったく事情が異なっている。都市や農村の日常生活、祭礼に欠かせないのが豚肉であり、食事の基礎と言っていい。それでいて豚は、しばしば「けがれ」の象徴として扱われる矛盾した存在でもある。
 逆に、ユダヤ教徒にとっては、豚を食すことが重大なタブーとなる。2大宗教の根底に大きく横たわる獣…それが豚なのだ。

 民俗学者である著者は、南仏、イタリア、イベリア半島などを中心に、ほぼヨーロッパ全域を視野に入れて豚と人とのかかわりを考察する。研究対象は中世の伝説から俗謡、現代の市場にまで及び、文献だけでない生の証言も多く集めている。
 その結果浮かび上がるのは、2つの宗教がいかに根深く敵対しているかということである。豚を拒否したユダヤ教と、そこから生じながら、ユダヤ教と訣別する手段として豚を受け入れたキリスト教。一方で、キリスト教徒は豚とユダヤ人を同一視し、不浄なものと見なす。しかし、そうやって差異を強調すればするほど、2大宗教が同根だという事実がぬぐいがたく示されるのである。

 本書は豚を媒介にすることで、きわめて独特な宗教論を成立させた。信仰の対立という、日本人にはどこか遠いテーマが、日常の顔を見せて立ち上がってくる。そこにこそ、この本が日本で読み解かれる意味があるのだろう。(大滝浩太郎)


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