KGBの世界都市ガイド
単行本
晶文社
\2,982
2001/06


★★★☆☆ (3.5)
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 旧ソ連KGB(国家保安委員会)の諜報部員たちが書いた、世界大都市のガイドブック―― というと、耳を疑う人も多いだろう。KGBといえば、冷戦期に世界中から恐れられた情報機関。ソ連が崩壊してずいぶんたつとはいえ、そんな本がはたして出版され得るのか、冗談半分の読み物ではないのか、と。

 ところが、本書は紛れもなく世に出ているし、ユーモアはふんだんに盛り込まれているものの、きわめて精密で確かな内容である。主に1960年代、ロンドン、ニューヨーク、東京、リオ・デ・ジャネイロ、ローマなど十都市に赴任した諜報員たちが、秘密活動の思い出を率直に公開している。隠れみのにした職業、エイジェント(情報提供者)との接触に便利なレストラン、尾行をまくのに最適な道筋…。こうした内容が実在の固有名詞を交えて明かされる。

 とはいっても、重苦しい告白本ではない。血なまぐさい話や破壊工作には触れず、神経を休める暇もない諜報員の生活をユーモアたっぷりに語っている。頭の固い上司への不満をぶちまける一方で、有名女優とベッドイン寸前までいったり、現地のエイジェントと交わした友情などホロリとさせる挿話があったりして、実に人間くさい。スパイもまた1つの職業なのだと、彼らに共感を抱いてしまうほどだ。

 取り上げられた街を旅したことがあるのなら、まったく違う角度から記憶を呼び起こしてみたくなるだろうし、これから訪れる人は、登場する商店や通りを訪ねずにはいられないだろう。都市にはまだまだ多くのドラマが隠されているのである。(大滝浩太郎)


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